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第4回 PERを使った銘柄選び、ここに注意 その2

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< 6 > ◆◆期間限定連載中◆◆ 公認会計士 足立武志氏による
「決算書分析による銘柄選びの落とし穴」
第4回 PERを使った銘柄選び、ここに注意 その2
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みなさんこんにちは。PER=10倍とはどのような意味なのか、考えたことはあるでしょうか?

この質問の意味が分かれば、PERを使った銘柄選びで落とし穴にはまる危険を回避できると思います。

 PERは、「株価÷1株当たり当期純利益」で計算されます。この分母と分子を逆にして、「1株当たり当期純利益÷株価」とすると、「株式益回り」という数値を求めることができます。

 この「株式益回り」とは、その株式を保有することによって期待できる利回りのことを表します。「配当利回り」に近いものと理解していただければ結構です。

 ただし、「配当利回り」は、「1株当たり配当金÷株価」で計算されるように、その株式を保有することによって実際に得ることが期待される利回りを表しているのに対し、「株式益回り」は、当期純利益をあたかも株主が獲得できるものとして、その利回りを表しているのです。

株式益回りと配当利回りの関係を見てみると

・株式益回り>配当利回り→配当金以外は会社に内部留保され、純資産の増加要因となります。
 
・株式益回り=配当利回り→当期純利益全て株主に配当されるので、内部留保はありません。
 
・株式益回り<配当利回り→当期純利益以上に株主に配当されるので、純資産が減少する

 会社は株主のものですから、当期純利益も株主のものであるはずです。ただし、当期純利益のうち、配当金として株主に分配されるもの以外は、会社内に留保され、これは純資産の増加要因となります。

 純資産は、実際に株主が金銭で受け取ることはできないものですが、れっきとした株主の所有分です。

 つまり、「PER10倍=株式益回り10%」というのは、予想1株当たり当期純利益と同じ水準の利益が10年間続いた場合、当期純利益(配当金として受け取る金額と、会社内に純資産として蓄積される金額のトータル)により、投資した金額を全て回収できるという意味なのです。

 成長が止まり、安定した利益をあげる成熟した会社のPERは10倍程度となることが多いようです。

筆者はこのことから、投資家は日本の株式市場において、投資した資金を配当金と利益の蓄積の合計により10年間で回収することを期待していると推測します。

 さて、詳しく見ていきたいと思います。例えばPERが50倍でも決して割高ではないケース、逆にPERが5倍でも割安とはいえないケースがあることが分かります。

 例えば、株価が50、予想1株当たり当期純利益が1のA社の例で考えてみましょう。現状では、PERは50倍です。これだけでは、PERが50倍だから株価は割高、という判断を下してしまいそうです。

 でも、A社は急成長が期待でき、来年以降、1株当たり当期純利益が2、4、8、16、32というように、倍々ゲームで増えていくことが期待できるとすればどうでしょう。

 すると、このA社を6年間保有すると、「 1+ 2 + 4 + 8 +16+32=63」の利益を累積で獲得できることになります。株価が50である現時点で買えば、投資元本の50が6年で回収できてしまいます。

 投資元本を10年で回収できる株価水準が適正水準だとすれば、6年で回収可能なA社の株価は割安であり、したがって、PER50倍であっても「割安」といえるのです。

PERが50倍、100倍になっても株価が上昇し続ける銘柄は、まさに今後の急成長を投資家が予測していることの表れなのです。

 逆に、PERが5倍でも割安とはいえないケースは、来期以降業績が急速に悪化し、最悪のケースでは赤字に転落してしまうと予想されていて、現時点の株価が投資元本を10年で回収できる株価水準より高くなっている場合です。

 2009年1月30日に業績予想の下方修正を行った商船三井は、株価が急落しました。2009年3月期の1株当たり当期純利益は、下方修正前の162円97銭から108円64銭に低下しました。

(参考:商船三井HP 2009年(平成21年)1月30日付「通期業績予想の修正に関するお知らせ」

 業績予想下方修正前の2009年1月29日の株価600円と1株当たり当期純利益162円97銭で計算したPERはなんと3.7倍という低さです。それなのに、業績予想下方修正を発表した1月30日の1日だけで株価は73円(12.2%)も下がって527円になりました。この株価の動きから、PER3.7倍でも株価は割安ではなかったといえます。

PERが低いと言う理由だけで株を買うと、得てして業績予想下方修正による株価急落で大損失、ということになりがちです。*ここに商船三井株価チャート掲載

 

 ※ こちらで拡大した図をご覧いただけます。

 ただし、「PER=50倍でも割安」「PER=5倍でも割高」といったように、現在の各銘柄のPERから株価が割高であるか、割安であるかを判断するには、少なくても今後5年程度の利益の見通しを正確に行う必要があります。

 ところが、経営者でさえ1年後の業績予測が大変難しいのに、一般の投資家が5年後の利益を現時点で予測するなど不可能ではないでしょうか?

 したがって、PERだけを用いて株価が割安か、割高かを判断するのは実際問題として不可能といわざるを得ません。

 そうしますと、巷で言われている「PER=20倍が適正水準」というものが、以前は目安であったかもしれませんが現在は全く根拠も意味のないものであることが分かってきます。会社ごとの将来の利益をどう予測するかで、あるべきPERの水準は異なってしまうからです。

 そもそも、各社の5年後、10年後の利益予測など実際には不可能ですから、PERを重要視しすぎるのは問題です。

 やはり、PERの高低だけではなく、株価の動きも重視すべきです。PERがたとえ5倍、3倍といったありえない水準にまで落ち込んでいたとしても、株価が下がっている間は手を出さない、逆にPERが50倍であっても、将来の成長性が高く、株価も上昇を続けているのであれば飛び乗ってみる(ただし損切りラインを事前に決めた上で)。こうすることにより、単純にPERの数値だけをみて投資する銘柄を選ぶより、失敗することはずっと少なくなるはずです。

 PERは単純なようで非常に奥の深いものです。「PERが50倍だから割高」「PERが5倍だから超割安」とはいえないことがお分かりいただけたでしょうか。

 PERの数値だけをみて割安か割高かを判断する株式投資を続けていると、いずれ痛い目に合うことになります。特に、業績予測では好業績なのに、株価が下げ続け、PERが10倍割れにまで下がっている、といったケースは要注意です。後から「業績の大幅な下方修正」という強烈なパンチを食らい、株価が大暴落・・・決して珍しくありません。

★ 今回のポイント 
■ PERは単純だが非常に奥の深い指標
■ PERを使った銘柄選びには落とし穴があることを知る
■ PERのみで株価を割安か割高か判断するのは危険
■ PERが低いのに好業績予測で株価が下げ続ける銘柄は要注意

参考:「投資力 株式投資と決算書」~公認会計士 足立武志の決算書攻略10か条~
第3回 貸借対照表はココをみる!【1】全体像~株式投資への活用法
○ 1株当たりの企業価値

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足立 武志(あだち たけし)
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。
足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー 取締役。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士。会計・税務業務にとどまることなく、執筆、セミナーなどを通じて、個人投資家 の資産運用に真に有益かつ必要な情報提供を行っている。著書に『すぐできる!らくらくネット株入門』(高橋書店)、『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)がある。パンローリング社トレーダーズショップでBlogを執筆中。
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