HOME > マネーを学ぶ6つの方法 > メールマガジンで学ぶ > 第3回 PERを使った銘柄選び、ここに注意-その1

マネーを学ぶ6つの方法 メールマガジンで学ぶ

第3回 PERを使った銘柄選び、ここに注意-その1

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
< 6 > ◆◆期間限定連載中◆◆ 公認会計士 足立武志氏による
「決算書分析による銘柄選びの落とし穴」
第3回 PERを使った銘柄選び、ここに注意-その1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 PER(株価収益率)は、多くの投資家になじみの深い、ポピュラーな指標です。でも、この指標にどのような意味があるのか、あまり深く考えずに使っている方も多いのではないでしょうか。
 PERが表している意味を理解できると、「PER 20 倍が適正水準」とか、「PER50 倍なので株価は割高」、「PER 5 倍だから株価は超お買い得」などといった「誤った常識」に翻弄されることもなくなります。

 PERについての注意点はいくつかありますので、今回と次回の 2 回に分けてご説明いたします。

 1つめの注意点は、PERを計算する際に使用する利益はすでに決算発表済みの「当期の利益」ではなく、「来期の利益の予測値」である、ということです。
 投資情報系のサイトでは、銘柄検索をすると、各銘柄のPERが表示されるなど、便利な機能が整っているものが多くあります。
 しかし、サイトの中には、PERの計算を、来期の予想利益ではなく、当期の利益を用いて行っているところもあります。
 当期の利益を用いて計算されたPERを「実績PER」、来期の予想利益を用いたPERは「予想PER」と呼ばれたりしますが、投資家にとって意味のあるものは「予想PER」です。

 なぜなら、以前にもお話しましたように、株価は「将来の業績」を織り込んで動くからです。すでに過ぎ去った過去の業績は関係ないのです。
 したがって、PERを使うときも、過去の利益を用いた「実績PER」ではなく、「予想PER」を使うべきです。

※ 予想PERは会社四季報などに掲載されています。但し、予想PER見る際に注意して見ておきたいポイントがあります。

 それが、2つめの注意点であり、特別利益や特別損失の取り扱いです。PERの計算の際に使用するのは損益計算書の一番下にある「当期純利益」です。特別利益や特別損失などを考慮しなければ、当期純利益はおおむね「経常利益×60%」の水準になります。 

 ところが、実際には多額の特別利益や特別損失が生じることがよくあります。しかしながら、特別利益や特別損失は、通常の事業活動からは発生しない「特殊な利益・損失」です。これらが含まれた当期純利益を元にPERを計算すると、会社が有している本当の実力が分かりません。

例えば、多額の土地売却益が発生している会社は、「経常利益×60%」に比べて当期純利益が大きくなります。こうしたケースで当期純利益を使ってPERを計算すると、実態より小さな数値になってしまいます。
 また、逆にリストラなどで多額の特別損失が発生している会社は、「経常利益×60%」より当期純利益がかなり小さくなり、結果としてPERが高い数値になりがちです。当期純損失の計上により、PERが測定不能になることもあります。

東亜建設工業の2008年3月期決算を見てみましょう。
http://www.toa-const.co.jp/ir/pdf/071220_01.pdf
(東亜建設工業(株)HP「特別利益の計上と業績予想の修正に関するお知らせ」)

 上記によれば、土地売却益の計上により、2008年3月期の当期純利益は15,400百万円になる見通しであることが分かります。これをもとに1株当たり当期純利益を計算すると、69.33円になります。
 実際の決算短信では、2008年3月期の当期純利益の実績は15,246百万円、1株当たり当期純利益は68.64円でした。
>> http://www.toa-const.co.jp/ir/pdf/080523_kessan.pdf
(東亜建設工業(株)HP 「平成20年3月期 決算短信」)

 業績予想の修正が行われたのは、2007年12月20日です。この翌日、12月21日の株価の終値は101円でした。

 修正後の業績予想値をもとにして計算した1株当たり当期純利益である69.33円と、101円の株価を用いてPERを計算すると、1.46倍になります。この数字だけを見れば、「超お買い得」に見えてしまいますね。しかし、ここで飛びついてはいけません。

 土地売却益を考慮せず、「経常利益×60%」で当期純利益を再計算しますと、1,020百万円になります。1株当たり当期純利益は4.59円です。
 この4.59円の1株当たり当期純利益と、101円の株価を使ってPERの修正値を出すと22倍になります。

 結論として、土地売却益を考慮に入れなければ、PERは1.46倍から22倍へと跳ね上がり、株価は決して割安とはいえないことが分かります。
 この後、東亜建設工業の株価は下落を続け、2008年3月には71円まで下げたことを追記しておきます。
* チャート 


上記のチャートは 「マーケットチェッカー2」より抜粋。尚チャートをクリックすると拡大PDF画面でご覧いただけます。

 会社四季報などに掲載されている予想PERは、こうした特殊事情を加味せずに単純に「株価÷1株当たり当期純利益」で計算されています。
 ですから、多額の特別利益の存在により、本来の実力以上に1株当たり当期純利益が多額に計算されている会社のPERは必然的に低くなり、「低PER」でスクリーニングすると上位に入ってしまいます。

★ 本日のポイント ★
 ■ PERは「実績PER」ではなく「予想PER」に着目
 ■ PERが低い会社に投資しようと思っているのなら、実際に投資する前に、特別利益などによって当期純利益がかさ上げされていないかを事前にチェック

参考:「投資力 株式投資と決算書」~公認会計士 足立武志の決算書攻略10か条~
第9回 損益計算書の特別損益には要注意

___________________________________
足立 武志(あだち たけし)
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。
足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー 取締役。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士。会計・税務業務にとどまることなく、執筆、セミナーなどを通じて、個人投資家 の資産運用に真に有益かつ必要な情報提供を行っている。著書に『すぐできる!らくらくネット株入門』(高橋書店)、『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)がある。パンローリング社トレーダーズショップでBlogを執筆中。
_____________________________
 ☆★☆★株式投資スクリーニングソフト★☆★☆
   マーケットチェッカー2商品紹介WEB
        http://mc.kbu.jp/
*初回インストール後14日間はお試し期間で無料*
_____________________________

 





ページトップへ

株式会社マネックス・ユニバーシティ

東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内19階