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< 6 > ◆◆期間限定連載中◆◆ 公認会計士 足立武志氏による
「決算書分析による銘柄選びの落とし穴」
第2回 将来の業績予測はアテにならない?
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前回(第1回)、株価は将来の業績を織り込んで動くため、決算書に記載されている過去の業績ではなく、将来の業績に注目する必要がある、とお話しました。
前回のコラムを読み逃した方はこちらから
その将来の業績を手っ取り早く知るには、「決算短信」を見ることをお勧めします。決算短信は、証券取引所のホームページや、各企業のホームページで見ることができます。
会社が発表する決算短信の多くには、来期の業績予測が記載されています。一部、業績予測を発表していない会社もありますが、その場合でも、会社四季報や日経会社情報に、独自の業績予測値が掲載されています。
さて、業績予測はあくまでも将来の予想ですから、実際の売上高や利益の額が、予測どおりになることはほとんどありません。
特に経済の変化のスピードが早まっている現在では、経営者であっても、1年先どころか、3ヶ月先の見通しさえ分からないのが実情です。
そのため、業績予測と実際の決算数値とが大きくかけ離れることが珍しくありません。
したがって、実際に決算でふたを開けてみると、びっくりするくらい予想より悪い数字であることもよくあります。増収・増益の予想だったのが、実際には売上が前期の半分になり、利益は大赤字だった、ということもあるのです。
もちろんその反対に良い方向へ予想が外れることもあります。
なお、実際に決算が発表されるまでに、当初の業績予測とは大きく異なる結果になりそうだ、と分かった時点で、会社は業績予測の修正発表を行います。業績予測は投資家が投資判断を行うにあたっての重要な情報です。なぜならば、当初の予測の修正を要するとなれば、実際の決算発表を待たずに、タイムリーに投資家に発表すべきという理由で修正されるからです。
私たちは株式投資をする上で、企業の業績が将来どうなるかを予想するときには、業績予測の数値を頼りにせざるを得ません。
しかし、「業績予測は当たらない」という現実を踏まえれば、業績予測の数値を鵜呑みにすることは非常に危険だということに気づかなければなりません。
当コラムのはじめに・・・、でもご紹介していますが、今回は更に詳しくトヨタについて見ていきたいと思います。
2008年11月6日にトヨタ自動車が発表した2009年3月期の業績予測修正によれば、営業利益は当初予測より1兆円の減益、最終利益も7,000億円の減益という、まさにサプライズなものでした。
さらに、そのわずか1ヵ月半後の2008年12月22日には、再び業績下方修正を発表しています。営業利益は11月発表時の6,000億円の黒字から、なんと1,500億円の赤字へ、当期純利益も5,500円億円の黒字予想から500億円の黒字へと、再度大幅な下方修正となりました。新聞等の報道でもトヨタの営業利益の赤字はとりあげられていましたが、1500億円の赤字という数字だけに着目するのではなく、当初予測の数値と比較してどうなのか?という点に着目していただきたいと思います。
以下のように、期初(2008年5月)時点での予測と比べると、いかに業績予想が不確実なものかがよくわかりますね。
営業利益:当初予測1兆6,000億円の黒字→下方修正後1,500円の赤字(1兆7,500億円の下方修正)
当期純利益:当初予測1兆2,500億円の黒字→下方修正後500億円の黒字(1兆2,000億円の下方修正)
(参考:トヨタ自動車HP2008年12月22日付け「業績予想の修正に関するお知らせ」)
しかし、一部の投資家にとっては、これらの業績予測下方修正の発表は、サプライズでもなんでもなく、事前に予測しうることだったのです。
具体的にどう予測していくかというと、
■ 日本での販売台数が非常に低い水準にとどまっていること、
■ 頼みの海外販売も金融危機を発端とした景気悪化により伸び悩んでいること、
■ そして為替レートが軒並み円高で推移していること・・・
こうした事実は業績予測修正が発表される前の段階で個人投資家でも容易に入手できる情報です。
そして、プロより情報量で劣る個人投資家が何よりも注目すべきはやはり株価の動きです。「株価はほぼ全ての情報を織り込んで動く」というのが筆者の考え方です。
実際に、トヨタ自動車の株価の動きをみていると、長期間下落を続けていました。まさに「トヨタ自動車の今期の業績はかなり悪そうだ」と株価の動きが教えてくれていたのです。
*トヨタ自動車のチャート

上記のチャートは 「マーケットチェッカー2」より抜粋
確かに、2008年10月の下げは行き過ぎで多くの銘柄が売られすぎていた、という意見も多くあります。実際、2008年10月に安値をつけてから大きく反発した銘柄も数多くあります。
しかし、一方で、2008年10月の下げの局面でつけた安値を2008年11月以降下回っている銘柄も多数発生しているのです。
特に、他の多くの銘柄の株価が下げ止まっているのに、下落しつづけている銘柄の場合には、単に売りたい投資家の売りが殺到して下げすぎた、という説明だけでは済まされない何かしらの理由があると考えるべきです。
その理由とは、まさに「実際の業績が公表されている予測値より悪い」ということに他なりません。
会社が発表している業績予測の数値に比べて株価が下げすぎているなあ、と思っても、「割安だ」と思って飛びついて買わないようにしましょう。業績の下方修正をはじめとした何らかの悪材料が隠れている可能性が高いからです。
少なくとも、株価が下げ止まるのを待ってから買う、もしくは決算発表(四半期決算発表を含む)や業績予測修正の発表がされた後で買うことをお勧めします。見せ掛けの「割安感」に頼って投資すれば、あっという間に株価が下落して大きな含み損をかかえることになりかねません。
業績予測と株価の動きを良く見比べて、両者に矛盾が生じている場合には、新規投資は慎重に行うようにしてください。
余裕のある方は株価の動きに加えて、経済情勢や為替相場・商品相場などの動きを観察すれば、会社が出している業績予測が達成可能かどうか、下方修正となる可能性が高いかどうか、ある程度は予想できるようになります。
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足立 武志(あだち たけし)
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。
足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー 取締役。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士。会計・税務業務にとどまることなく、執筆、セミナーなどを通じて、個人投資家 の資産運用に真に有益かつ必要な情報提供を行っている。著書に『すぐできる!らくらくネット株入門』(高橋書店)、『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)がある。パンローリング社トレーダーズショップでBlogを執筆中。
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