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< 6 > ◆◆期間限定連載中◆◆ 公認会計士 足立武志氏による
「決算書分析による銘柄選びの落とし穴」
第1回 決算書は「過去のデータ」であることを忘れずに
~アーバンコーポレイションを例に~
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決算書をみると、色々なことが見えてきます。特に、「比較」という観点で決算書を眺めることは、非常に有用です。
例えば、A社の過去5年程度の決算書を比較して、毎年増収・増益(売上も利益も年々増加していること)であれば、今後の業績の伸びが期待できる成長性の高い会社であると予想できます。同様にB社の過去5年の売上や利益がほぼ同じ額であれば、成長性は高くないものの、安定して利益をあげることができる会社である、と分かります。
しかし、こうした決算書から読み取れる事柄は、全て「過去のデータ」であることを忘れてはなりません。
例えば、過去5年間増収・増益を続けている会社が、今期になって突然赤字に転落し、売上も急減する、ということもありえるのです。こうしたことは、過去の決算書にいくら目を凝らしてみても分かりません。
下記のデータは、先日経営破たんした、不動産流動化関連企業のアーバンコーポレイションの過去5年間のものです。
(出所:決算短信をもとに筆者作成。金額の単位は百万円。)
まず、売上と利益の推移です。過去5年間の損益計算書のデータを全て掲載するのは分量が多すぎますので、ここでは損益計算書の要である売上および利益を示すことにします。
■ 図1

次に、キャッシュ・フローの状況です。(図中の「CF」は「キャッシュ・フロー」の略)
△はマイナスを表します。
■ 図2
最後に、純資産、自己資本比率、有利子負債残高です。これらは、貸借対照表から読み取れる、もしくは計算できる数値です。(有利子負債は、借入金と社債、コマーシャルペーパーの合計としています。)
■ 図3
これらのデータから読み取れるのは以下のようなことです。
【 1 】過去5年間は、売り上げや利益は年々増加しており、成長性の高さがうかがえる。
【 2 】キャッシュ・フローをみると、営業キャッシュ・フローが5年続けてマイナスである。成長性の高い会社は営業キャッシュ・フローがマイナスになることが多いが、それでも5年連続で営業キャッシュ・フローがマイナスということは財務面での安定性は低いと言わざるを得ない。
その一方で、平成17年3月期以降は財務キャッシュ・フローが大きくプラスであることから、営業キャッシュ・フローのマイナスを借入によりまかなっている構図がみえる。(注)
【 3 】純資産は年々増加しているものの、それ以上に有利子負債残高が急増しており、自己資本比率も平成19年3月期以降急激に下落しているのが気がかりである。(注)
(注)キャッシュ・フロー計算書や貸借対照表につき注目すべきポイントは、「投資力 株式投資と決算書 第 11 回 倒産の予兆? 決算書のここを見る!」を併せてご覧いただくと理解がより深まると思います。
このように、損益計算書から読み取れるのは「成長性が高い」というプラス材料である一方、貸借対照表やキャッシュ・フロー計算書から読み取れるのは、「借入が急増し、営業キャッシュ・フローも赤字であり、財務体質が弱い」というマイナス材料です。
結局、この会社は経営破たんしましたので、損益計算書からのプラス材料よりも、貸借対照表やキャッシュ・フロー計算書からのマイナス材料に着目すべきだったことが分かります。
決算書を「過去のデータ」としてとらえた場合、貸借対照表やキャッシュ・フロー計算書に比べて、損益計算書の有効性は低くなります。
貸借対照表やキャッシュ・フロー計算書をみることで、その会社の倒産の危険性をある程度推測することが可能です。倒産の危険性が高いと思われる会社をあらかじめ投資対象から外すことは非常に有益な作業になります。
一方、損益計算書をみても、分かるのは過去の業績です。確かに、過去の損益計算書をみれば、成長性の高い会社か、安定的に利益を上げている会社か、景気の変動で業績が大きく左右される会社か、といった、その会社の特徴をつかむことはできるでしょう。しかし、将来の業績までは分かりません。
株価は、将来の業績を織り込んで動きます。過去の業績がいくらよくても、将来が芳しくなければ、株価は上昇しません。
アーバンコーポレイションの株価は、平成19年6月に2,360円の高値をつけた後は一貫して下げ続け、平成20年9月の上場廃止のときは1円になりました。
業績が最も良かったのは、平成20年3月期でした。にもかかわらず、株価のピークは平成20年3月期の途中である平成19年6月、というのは非常に興味深いものです。
株価は、アーバンコーポレイションの業績のピークは平成20年3月期である、ということを、平成19年の後半にすでに教えてくれていたのです。
個別銘柄への投資をする際には、決算書における過去の業績だけにこだわるのではなく、将来の業績がどうなりそうなのか、この点を重視するようにしてください。
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足立 武志(あだち たけし)
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。
足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー 取締役。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士。会計・税務業務にとどまることなく、執筆、セミナーなどを通じて、個人投資家 の資産運用に真に有益かつ必要な情報提供を行っている。著書に『すぐできる!らくらくネット株入門』(高橋書店)、『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)がある。パンローリング社トレーダーズショップでBlogを執筆中。
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