HOME > マネーを学ぶ6つの方法 > メールマガジンで学ぶ > 第 5 回 貸借対照表はココをみる!【3】貸付金・売掛金・棚卸資産 ~末はキャッシュか費用か~
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第 5 回 貸借対照表はココをみる!
【3】貸付金・売掛金・棚卸資産 ~末はキャッシュか費用か~
前回のコラムは、貸借対照表はココをみる!【2】土地~~「隠し財産」を探せ~~
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○将来、費用に変わる資産がある
1株当たりの純資産 > 株価
1株当たりの純資産 < 株価
1株当たりの純資産 = 株価
貸借対照表を株式投資に生かすには、1 株当たりの純資産と株価との比較が重要なこと、そして、資産の額に信憑性がなければ、正確な 1 株当たりの純資産も計算できないことは、すでにお話したとおりです。
そして、前回(第4回)、貸借対照表の資産の部に記載されている資産の原則として、次の2つがあることをご紹介しました。
【 1 】資産は、取得したときの価格で貸借対照表に記載されている
【 2 】資産は、将来キャッシュに変わるものと、費用に変わるものがある
このうち、【 1 】については、前回例に挙げた土地をはじめ、資産には貸借対照表に計上されている価格と、時価とに乖離があることが多いため、資産を時価に置き直した上で実質的な純資産を計算することが有効である、ということをお話しました。
(前回分を読み忘れてしまった方はこちらからご覧いただけます。)
今回は、もう1つの原則である【 2 】についてです。
例えば、貸借対照表の多くには「売掛金」が計上されています。「売掛金」が何かというと、これは、商品をツケで売り、まだ回収されていない代金のことです。売掛金は、代金が回収されればキャッシュになりますから、「将来キャッシュに変わる資産」といえます。
「建物」はどうでしょうか。建物は、減価償却という手続きにより、貸借対照表に計上されている金額が少しずつ費用化されていきます。したがって、「将来費用に変わる資産」です。
ここで問題になるのが、「将来キャッシュに変わる資産」のはずなのに、「費用」になってしまうケースがあるということです。
○要注意!ある日突然、資産から費用に変わってしまうもの
「貸付金」を例に挙げてみましょう。貸付金は、他人に貸したお金で、将来返済されますから、「将来キャッシュに変わる資産」です。ところが、貸し先の業績が悪くなって、貸したお金を返してもらえなそうだ、ということになったらどうでしょうか。
この場合、返してもらえなそうな金額、もしくは返ってこないことが明らかな金額を「貸倒引当金繰入額」もしくは「貸倒損失」という科目で費用にしなければなりません。
また、返してもらえなそうな金額は、貸借対照表にも「貸倒引当金」として資産からマイナスして表示されています。
同じことは売掛金にも当てはまります。売掛金も、本来回収されてキャッシュになるはずのものが、得意先の倒産や経営不振により回収できなくなることがあります。この場合、貸付金のケースと同様の処理が必要となります。
棚卸資産、いわゆる「在庫」もやっかいな存在です。在庫は、【 1 】と【 2 】の特徴を併せ持っています。在庫は販売すればキャッシュが入ってきます(※)から、「将来キャッシュに変わる資産」です。ところが、入ってくるキャッシュの金額が、貸借対照表に計上されている在庫の金額とは異なるのがポイントです。
もし、貸借対照表に計上されている在庫の金額より高く売れれば、差額が利益になります。逆に、貸借対照表に計上されている在庫の金額より安い値段でしか売れなければ、差額は費用になってしまいます。このケースでは、「キャッシュに変わる部分」と「費用に変わる部分」が混ざっていることになります。(※)厳密には、現金売上でなければ、販売代金は一旦「売掛金」や「受取手形」として計上し、代金回収時にキャッシュに振り替わることになります。
では、在庫の中に全く売れないで残っているものがあったとしたらどうでしょうか?この場合、売れないことが判明した時点で、売れない部分の金額を「棚卸資産評価損」などの科目で費用計上するとともに、同額を貸借対照表の棚卸資産から減少させる必要が生じます。
実は、棚卸資産や貸付金、売掛金の中に、「将来費用になってしまう部分」がどれだけあるかどうか見極めるのは困難です。しかし、ある程度目星を付けることはできます。
例えば、棚卸資産であれば、前期と当期で売上の金額がそんなに増えていないのに棚卸資産の額が急増した、というケースは要注意です。売掛金も同様の考え方です。例えば当期の売上高が前期より減っているのに売掛金は逆に急増しているようなケースは、売掛金の回収が滞っていることが考えられ、危険な状態です。貸付金であれば、前期と当期で残高がほとんど変わっていないような場合、返済が滞っていることも考えられますから注意が必要です。
○1株当たり純資産と比べ割安株は貸付金、売掛金、棚卸資産に注目!
このように、貸借対照表の資産の中には、ある日突然、資産から費用に変わってしまうものもあるのです。資産として計上されているものが費用に振り替われば、最終的に貸借対照表の純資産の減少につながります。1株当たり純資産と比べて株価が非常に低い企業があったら、「割安だ」と飛びつくのではなく、ぜひ貸借対照表をチェックしてみてください。貸付金や売掛金、棚卸資産に何か問題が隠れているかもしれません。
<まとめ>
・貸借対照表の資産には、将来的にキャッシュになるはずのものでも、費用になってしまうものがある
・貸借対照表の貸付金の額が前期からあまり減っていなかったり、売上が増えていないのに売掛金や在庫が増えていたら要注意
次回は、突然多額の損失を生む原因となる恐怖の資産、「繰延税金資産」についてです。
足立 武志(あだち たけし)
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。
足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー 取締役。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士。会計・税務業務にとどまることなく、執筆、セミナーなどを通じて、個人投資家 の資産運用に真に有益かつ必要な情報提供を行っている。著書に『すぐできる!らくらくネット株入門』(高橋書店)、『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)がある。パンローリング社トレーダーズショップでBlogを執筆中。