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< 4 > ◆◆期間限定連載中◆◆「 投資力 株式投資と決算書 」
実践編~決算書を使って分析してみよう~
第 4 回 倒産の危険性を見極める!~解説編(2)
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今回はB社の倒産の危険性についての分析です。実は、前回の、A社の決算書から倒産の危険性が高いことを読み取るのは、それほど難しいことではありませんでした。それに比べると、今回のB社は難易度がかなり高いといえます。
第2回でご紹介したヒントを確認しておきましょう。
実際の決算書で確認する場合は、こちらのファイルをダウンロードしてみましょう。(下記のページ数はこの決算書のページ数を表します。)決算書の該当箇所をまとめて確認したい方は こちらから。(後半の解説とともにご覧ください。)
<ヒント>
【1】損益計算書
・平成18年8月期、平成19年8月期の売上や利益の状況はどうですか?
(※p.15)
【2】貸借対照表
・平成18年8月期と平成19年8月期を比べて、流動資産や固定負債に大きな変動がありませんか?(p.12)
・現金預金(p.12)と有利子負債(借入金+社債)の金額を比べてみてください。(p.13、14)
【3】キャッシュ・フロー計算書
・営業キャッシュ・フローはマイナスになっていませんか?(p.18)
・投資キャッシュ・フロー、財務キャッシュ・フローのプラスまたはマイナスの要因をみてください。(p.19)
・キャッシュの残高は減っていませんか?(p.19)
【4】決算短信のサマリー情報
・平成18年8月期と平成19年8月期とで、純資産の額や自己資本比率はどう変動しましたか?(p.1)
・平成20年8月期の業績予想は、平成19年8月期の実績と比べてどうですか?
(p.1)
それでは、早速、損益計算書からみていきましょう。平成18年8月期と平成19年8月期を比べると、売上高が大きく増加しています。利益も大幅な黒字であり、しかも、平成19年8月期の営業利益、経常利益、当期純利益の全てが平成18年8月期より大きく増加しています。
そして、決算短信のサマリー情報にある平成20年8月期の業績予想では、大幅な増収・増益の予測でした。損益計算書を見る限りでは、成長性の高い、非常に優秀な会社にみえます。
貸借対照表はどうでしょうか。平成19年8月期末の現金預金は999,605千円【B-2-1】、
有利子負債は9,046,000+70,000+828,656【3つの合計B-2-2】+395,000+9,072,163【2つの合計B-2-3】=19,411,819千円です。不動産業ですからある程度致し方ないとはいえ、現金預金と比べた有利子負債の多さは若干気にはなります。
また、平成18年8月期と平成19年8月期を比べた特徴的な変化として、流動資産の「販売用不動産」の額が12,413,125千円から21,978,165千円へと大きく増加していること【B-2-4】、
長期借入金も2,413,518千円から9,072,163千円へと急増していることが分かります。【B-2-5】
つまり、新たな販売用不動産の仕入れの多くを借入金によりまかなったことが読み取れます。
このことから、販売用不動産をうまくさばくことができないと、借入金を返済できなくなる可能性がある、と推測できます。
次に、キャッシュ・フロー計算書【B-3-1】を見てみましょう。
営業キャッシュ・フローは平成18年8月期、平成19年8月期とも大幅なマイナスです。ただし、成長著しい会社の場合、新たな仕入れ代金の支払のスピードが、販売代金回収のスピードを上回ることがしばしばあります。B社の場合も、営業キャッシュ・フローがマイナスである主要因は、「販売用不動産の増加」によるものです。
「不動産在庫の販売→代金回収→新たな不動産の仕入れ→仕入れた不動産の販売」というサイクルが順調に続いている限りは問題ありません。しかし、販売が急激に落ち込むなどの理由で、このサイクルに変調をきたすと、資金繰りの面からは危険な状態に陥ることになります。したがって、このB社の状況は、直ちに危険とはいえないものの、今後の状況を常にウォッチし続ける必要があります。
投資キャッシュ・フローは特段問題はありません。【B-3-2】
財務キャッシュ・フローは、平成18年8月期は新株発行によるプラスもありましたが、平成19年8月期は、借入の増加によるプラスです。【B-3-2】つまり、営業キャッシュ・フローのマイナスを、借入で補っている図式です。借入金は後々に返さなければいけませんから、早期に営業キャッシュ・フローをプラスに持っていくことが急務といえます。
平成19年8月期末のキャッシュ残高は、平成18年8月期末より多少増えてはいますが、有利子負債に比べるとかなり少額であるのは気がかりです。資金不足時にいつでも銀行から借りれる体制になっていないと、突発的な出来事に対応できない可能性があります。
決算短信のサマリー情報はどうでしょう。平成18年8月期と平成19年8月期とを比べると、純資産は増加している一方、自己資本比率は下がっています。【B-4】
これは、多額の不動産を借入金で調達したためです。ただ、注意すべき変化ではあるものの、問題となるレベルではありません。また、前述の通り、平成20年8月期の業績予測は増収・増益となっています。
株価の動き【B-5】は、昨年秋ごろから一貫した下落基調となっていました。平成18年8月期、平成19年8月期と増収増益、さらに平成20年8月期も増収増益予測にもかかわらず、一向に株価が下げ止まらないというのは、隠れた悪材料が存在する可能性が高く、警戒すべき要素です。

B社の場合、損益計算書(業績面)だけをみると、業績好調で成長著しい会社に見えます。ここからは、倒産の危険性を読み取ることは難しいでしょう。貸借対照表で販売用不動産や長期借入金が増加していること、キャッシュ・フロー計算書において営業キャッシュ・フローが大幅なマイナスだったことも、B社が倒産した後になって改めて決算書を見返すと、警戒すべき要素だったともいえますが、高成長を遂げている会社で資産や負債の急増、営業キャッシュ・フローのマイナスはよくあることです。
結局、B社の倒産を予見していたのは、「下げ続けた株価」ということになります。
「火のないところに煙は立たず」です。業績好調で高成長が期待できたはずのB社の株価が下がり続けたのには、それなりの理由があったのです。株価は、それまで好調だった業績に急ブレーキがかかっていたことを知らせてくれていたのです。
たとえ好業績で、増収増益の予測が出ていたとしても、株価がちっとも上昇しないどころか下落を続けている、という場合は、要注意です。最近では特に新興の不動産会社にその動きが顕著で、7月18日にも東証1部上場のゼファーが民事再生法の適用を申請しました。ゼファーの株価も、2006年初めの高値から、2年半の間延々と下げ続け、倒産直前には高値の30分の1まで下落していました。2007年3月期までは増収・増益で高成長を続けていたにもかかわらずです。
決算書による分析の欠点は、「過去の情報」のみを用いて分析することにあります。決算短信のサマリーでは、来期の業績予測が掲載されていますが、これはあくまでも「予測」にすぎません。今回のB社も、平成20年8月期は増収増益の予測と発表しておきながら、結局は倒産してしまったわけです。
これに対して、株価の動きは「現在」そして「将来」をも表します。下落を続けたB社の株価の動きをみると、平成20年8月期が増収増益どころか、倒産の危険性もあることを暗示していたと思えてなりません。ですから株価の動きを軽視してはならないのです。
B社の経営状態が急速に悪化していたことは、不動産業界の間では広く知られていたのかもしれません。しかし、我々個人投資家は、そうした情報を知るすべもありません。そんな個人投資家にとって、株価の動きこそが「真実で最新の情報」なのだ、ということを肝に銘じておく必要があります。
決算書だけ見ていては、B社の倒産は予測できなかったでしょう。株価の動向に注意しておくとともに、万が一投資先の会社が倒産してもダメージを少なくするように、複数の銘柄に分散して投資しておくことも、リスク低減のために重要です。
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足立 武志(あだち たけし)
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。
足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー取締役。
1975年神奈川県生まれ。
一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士。
会計・税務業務にとどまることなく、執筆、セミナーなどを通じて、個人投資家 の資産運用に真に有益かつ必要な情報提供を行っている。また、マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフトマーケットチェッカーの企画開発に関わる。
著書に『すぐできる!らくらくネット株入門』 (高橋書店)
『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)がある。
パンローリング社トレーダーズショップでBlogを執筆中。
株式会社マーケットチェッカー足立武志への連絡先
メールアドレス education@kbu.jp
ホームページ http://corp.kbu.jp/