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< 4 > ◆◆期間限定連載中◆◆「 投資力 株式投資と決算書 」
~公認会計士 足立武志の決算書攻略10か条~
第11回 倒産の予兆? 決算書のここを見る!
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○決算書を活用する重要な目的
決算書を株式投資に活用する目的は、実態より株価が割安な企業や、将来の高成長が期待できる企業を探すことにあります。
でも、もう1つ、決算書を活用する重要な目的があるのです。それは、「倒産のおそれがある企業を投資対象から外すこと」です。
上場企業が民事再生法や会社更生法の適用、自己破産などにより事実上倒産すると、その企業の株価は限りなくゼロに近い水準まで下落してしまいます。いくらPERやPBRから判断して株価が割安にみえても、その企業が倒産してしまっては元も子もありません。
したがって、株価が割安かどうかを気にする前に、まずは投資しようとしている企業の倒産の危険性を調べる必要があります。
○企業が倒産する理由
ところで、企業が倒産する理由は何故だかご存知ですか?「赤字が続いているから」でしょうか?「債務超過だから」でしょうか?実はどちらも正しい理由ではありません。
企業が倒産するのは、「資金繰りがつかなくなるから」なのです。
ですから、いくら赤字続きでも、債務超過に陥っていても、キャッシュさえあれば、倒産はしません。
とはいえ、赤字続きや債務超過の企業は、そうでない企業より倒産の危険性が高いことには違いありません。倒産の可能性が高い会社としては、次の4つのケースが挙げられます。
1)赤字が続いている
2)キャッシュが少ない/急速に減っている
3)有利子負債(借入金や社債)が多い
4)債務超過である
上記のうちの複数に該当すれば、倒産の危険性はさらに高まります。
倒産の危険性を判断するには、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書のすべてをフル活用します。
○貸借対照表はここをチェック
貸借対照表では、まず「自己資本比率」をチェックします。自己資本比率は、以下の式で求めます。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 資産
ただし、自己資本の定義は若干複雑なので、簡便法として、自己資本の代わりに純資産の額を用いて計算すればよいでしょう。
債務超過の企業は、自己資本比率がマイナスになります。また、自己資本比率が小さければ小さいほど、一般に倒産の危険度は高くなります。
もう1つ、貸借対照表では有利子負債の残高と、現金預金の残高をチェックしましょう。貸借対照表の負債の部の「借入金」や「社債」を合計したものが有利子負債の額です。この残高自体が大きかったり、キャッシュ(=現金や預金)の残高と比較して有利子負債の額が多額であると、倒産の危険性が高まります。
○損益計算書ではここをチェック
損益計算書では、赤字続きであるかどうかに注目しましょう。できれば、過去5年程度の損益計算書をチェックしましょう。特に、営業利益の赤字が何年も続いている場合は要注意です。本業で利益の出ない状態が続いていることを示しますから、倒産の危険度は高いといえます。
○キャッシュ・フロー計算書ではここをチェック
キャッシュ・フロー計算書では、以下のケースに該当していれば、倒産の危険性が高いと判断します。
(1)キャッシュの残高が急速に減っている
(2)営業キャッシュ・フローがマイナスの状態が続いている
(1)のケースは、キャッシュの減少がどのような要因で生じているのかを分析することが重要になります。営業キャッシュ・フローのマイナスを要因としているのであれば、本業でキャッシュを生んでいないのですから問題です。また、財務キャッシュ・フローのマイナスが要因であれば、銀行から借入金の返済を迫られ、新規融資を受けてもらえないのかもしれません。そうなると、資金繰りに行き詰る危険性が高くなります。
(2)のケースは、本業でキャッシュを獲得できない状況が何年も続いていることを表しますから、危険度はかなり高いとみるべきです。 損益計算書の営業利益が黒字なのに、営業キャッシュ・フローがマイナス、という場合は特に注意しなければなりません。粉飾決算をして損益計算書の数字を良く見せている可能性もあるからです。
○事例:スルガコーポレーションの場合
(1)のケースの具体例として、先日民事再生法の適用申請をして事実上倒産したスルガコーポレーションのキャッシュ・フロー計算書を見てみましょう。
*①~⑥はスルガコーポレーションの決算短信よりキャッシュ・フロー計算書と貸借対照表参照
2008年3月期は営業キャッシュ・フローは418億円のプラスと非常に好調でした①。しかし、財務キャッシュ・フローが711億円ものマイナスで②、その内、財務キャッシュ・フローの「短期借入金の純増減額」、「長期借入金の返済による支出」、「社債の償還による支出」の合計から「長期借入れによる収
入」を差し引いた金額である680億円が借入金の返済や社債の償還によるものです③。この結果、期末のキャッシュはわずか14億円となり④、1年間でキャッシュが313億円も減ってしまったことが分かります⑤。期末の有利子負債残高(貸借対照表の「短期借入金+一年以内償還予定社債+長期借入金+社債の合計」)は、1年間でかなり減少したものの、それでも約575億円ありますから⑥-1、⑥-2、銀行からの新規借入れができなければ、期末のキャッシュ14億円だけでは早晩資金繰りに行き詰ることが予想できたのです④。
次回は最終回です。今までのまとめとして、決算書を株式投資に役立てるための「3つのポイント」をご紹介します。
<まとめ>
・銘柄選びの際は、まず倒産の危険性を決算書でチェック
・企業が倒産するのは「資金繰りがつかなくなった」とき
・キャッシュ・フロー計算書で、キャッシュの変動要因を知ることも重要
足立 武志(あだち たけし)
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。
足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー 取締役。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士。会計・税務業務にとどまることなく、執筆、セミナーなどを通じて、個人投資家 の資産運用に真に有益かつ必要な情報提供を行っている。著書に『すぐできる!らくらくネット株入門』(高橋書店)、『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)がある。パンローリング社トレーダーズショップでBlogを執筆中。