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第 10 回 キャッシュ・フロー計算書~キャッシュ獲得の実力をみよう

 

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第10回 キャッシュ・フロー計算書~キャッシュ獲得の実力をみよう
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○キャッシュ・フロー計算書の目的は、キャッシュの増減と原因を示すこと

今回は、近年ますます重要性が増している、キャッシュ・フロー計算書を取り上げます。
キャッシュ・フロー計算書は、貸借対照表、損益計算書とともに、決算書の1つとして位置づけられています。
キャッシュ・フロー計算書の目的は、キャッシュが1年間でどれだけ増減したか、そして、その増減がどのような原因によるものかを示すことにあります。
 
キャッシュ・フロー計算書では、1年間のキャッシュの動きをの3つに分類します。
3つが何かというと、「営業活動によるキャッシュ・フロー」「投資活動によるキャッシュ・フロー」および「財務活動によるキャッシュ・フロー」です。それぞれの意味は以下のとおりです。

 ・「営業活動によるキャッシュ・フロー」(以下「営業CF」)
  本業により稼いだキャッシュがどのくらいあるかを表します。

 ・「投資活動によるキャッシュ・フロー」(以下「投資CF」)
  設備投資や子会社への出資、貸付など、投資活動によりキャッシュがどのように動いたかを表します。

 ・「財務活動によるキャッシュ・フロー」(以下「財務CF」)
  借入れやその返済、社債の発行やその償還、新株の発行、配当金の支払といった、財務活動によりキャッシュがどのように動いたかを表します。

○営業CF、投資CF,財務CFのどれもプラスはよいことか?

企業にとって、キャッシュが増えることはよいことです。しかし、「キャッシュの増え方」も重要なポイントとなります。

例えば、営業CF、投資CF,財務CFのどれもがプラスという状況は、すべてのCFにおいてキャッシュが増えていますから、理想的なキャッシュの増え方に見えます。ところが、実はそうともいえないのです。

営業CFは、本業で得られたキャッシュですから、当然プラスであることが理想的です。

投資CFは、設備投資など、投資活動により動いたキャッシュを表します。これがプラスということは、固定資産を売却したりしていることを意味します。

本来、企業はライバルに差をつけるため、常に設備投資など、将来の利益につながるような投資を行っているものです。その場合、投資に伴いキャッシュを支出しますから、投資CFはマイナスになるはずです。

これが逆にプラスになっているということは、例えばリストラなどにより、過剰な固定資産を売却していることを表します。無駄なものを売って企業をスリムにさせるという点からはプラスなのですが、企業の成長という観点からは逆行した動きになっています。うがった見方をすれば、固定資産を売却しないとキャッシュが足りない、という切迫した状況に企業が置かれている可能性も十分に考えられます。

また、財務CFがプラスのケースは、新株発行、または借入れによりキャッシュが増加したことを表します。
新株発行による資金調達であれば、将来返済の必要のない資金ですから、特段問題ありません。
借入れによる資金調達は、将来返済を要するものですから、ないに越したことはありませんが、ケースバイケースで判断することになります。
成長著しい企業が、運転資金調達のために一時的に借入金が増加することはそう問題にはなりません。一方、本業が振るわずに営業CFが赤字で、資金不足のために仕方なく借入れをした、というようなケースは、倒産リスクという観点からは注意しなければなりません。

○理想的なキャッシュ・フローとフリー・キャッシュ・フロー

したがって、理想的なキャッシュ・フローの一形態は、「営業CFがプラス」、「投資CFがマイナス」、「財務CFがマイナス」という状態です。その上で、3つのCFをトータルしてプラスになっていれば申し分ありません。
本業で稼いだキャッシュを使って積極的に投資活動を行い、借入金の返済に充てて、なおかつキャッシュが残る、という最高の状況にあるからです。

なお、「営業CF+投資CF」を「フリー・キャッシュ・フロー」と呼ぶことがあります。これは、1年間で、企業が自由に使えるキャッシュがどれだけ増えたか(あるいは減ったか)を表します。自由に使えるキャッシュが多ければ、更なる設備投資、借入金の返済、自己株式の取得、企業買収など、経営の選択肢が広がります。

したがって、フリー・キャッシュ・フローが大きい企業は、株式市場でも評価される傾向にあります。

○キャッシュ・フローの長期的な傾向が重要

最後に、注意したい点を1つ挙げておきます。キャッシュの動きというのは、1年単位でみると、年によって結構大きくバラつきがあるものです。ですから、1年分ではなく数年分のキャッシュ・フロー計算書をみて、その企業のキャッシュ・フローの長期的な傾向をみるようにしてください。

ところで、キャッシュ・フロー計算書は、上で説明したような、「優良な会社」を見極める、ということ以上に、倒産の危険性のある「危ない会社」を見つける有効な手段と成り得るのです。この点については、次回(第11回)「倒産の予兆?決算書類のここを見る!」において、詳しくご紹介します。

<まとめ>
・キャッシュが増えていれば良し、ではなく、キャッシュが増えた、または減った原因こそが重要


・フリー・キャッシュ・フローの額が大きい企業は高く評価される傾向にある

 

足立 武志(あだち たけし)
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。
足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー 取締役。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士。会計・税務業務にとどまることなく、執筆、セミナーなどを通じて、個人投資家 の資産運用に真に有益かつ必要な情報提供を行っている。著書に『すぐできる!らくらくネット株入門』(高橋書店)、『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)がある。パンローリング社トレーダーズショップでBlogを執筆中。
 

 





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