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チャールズ R.モリス (著) 『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか 信用バブルという怪物』

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20冊目 長期化するサブプライム問題から見えてくるもの
チャールズ R.モリス (著) 『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか 信用バブルという怪物』

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なんとなく、もう沈静化したのかな、と勝手に思いこんでいたサブプライム問題が、このところまた世間を騒がしています。今度はアメリカの連邦住宅抵当公庫ファニーメイとフレディマックという、3月に「救済」されたベアースターンズとは比べものにならない大規模な存在が、救済を必要とする状態であるということで・・・・。おばけのように次から次へと出てくる話は、より強力なネガティブインパクトをもたらしています。

ファニーメイ、フレディマックという名前だけ聞くとなんだか愉快な雰囲気ですが、その成立ちは1930年代のニューディール政策の一環である住宅所有機会の拡大戦略によるもので、「郊外に一戸建てと緑の芝生と車をもつ」というアメリカンドリームの実現を支えてきたのです。公的な役割をもつ機関ですが、共にニューヨーク証券取引所などに上場されている株式会社です。

昨年一気に広まったサブプライム問題についての一連の出来事の中で、この2社が発行する債券や株式の格付け低下などは報じられていましたが、とうとう破綻の可能性まで取りざたされるようになるとは。既に、アメリカの低所得者向け住宅ローンを取り巻く金融の世界での問題、という域を超えた来事が起きているようです。今週取り上げるのは、50年以上前に遡り、1960年代からのアメリカ経済の経緯を見据えつつ、次なる展開を意欲的に書き上げた話題の本・・・

『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか 信用バブルという怪物』 です。

『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか 信用バブルという怪物』 
チャールズ R.モリス (著)、 日本経済新聞出版社、 1,890 円(税込)
【ジャンル】 金融・経済の仕組み
【難易度】 ★★★★☆   (★が多いほど難しい) 
【文字量】 ★★★☆☆   (★が多いほど多い) 
【所要時間】 ★★★★☆ (★が多いほど時間がかかる)
【おすすめ度】 ★★★☆☆ (★が多いほどおすすめ) 

元銀行家で、弁護士・評論家であるチャールズ R. モリス氏による本です。原題は「 Trillion Dollar Meltdown: Easy Money, High Rollers, and the Great Credit Crash ( 1 兆ドルに及ぶ大暴落、あるいは 1 兆ドルが失われていく・・・、というような意味でしょうか)」で、 本年3月に発売され、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーとなりました。タイトルにもあるように、サブプライム問題に限らずにより広く・長くアメリカ経済を俯瞰し、どういう歴史・背景から最近表面化してきている多くの「問題」が生まれているのかを解き明かしています。

話は、1960年代まで遡ります。それは、経済と政治が密接に関係を持っていることを痛感するものがたり。

1960年代は政府の役割を重視するリベラル派の政策が主流となりますが、1970年代にはFF金利が19%にもなる大インフレ(!)を招くこととなります。(この本において「リベラル」とは、自由主義的なニュー・リベラルではなく、社会民主主義的なクラシカル・リベラルを指しているようです)。

そして、1979年にポールボルガー氏がFRB議長に就任し、1980年にはロナルド・レーガンが大統領選挙で勝利。1980年代には、シカゴ学派の自由主義イデオロギーが優勢となって金融市場の規制緩和、中央政府の力が削減されていき、1990年代には「熱すぎでも冷たすぎでもない、絶好の景気」を迎えます。そういう流れの中で、今まさに破裂の時を迎えている「信用バブル」の基礎が築かれていった・・・・・

単純化してしまうと「リベラル」と「自由主義」の時代が20年から30年のサイクルで行き来していて、次は「リベラル」の時代に向かうのでは、と示唆されています。確かにそういう風潮も見られるような気はします。ふむ、今年のアメリカ大統領選挙をみる視点が一つ、増えそうです。

そのほか、金融市場が生きていくのに欠かせない空気のようなもの、と筆者が表現する「信用」が過剰に生み出され、肥大化していき、実体経済の総生産を遥かに越える逆ピラミッド型の構造となる様子も、とても詳しく解説しています。(詳しすぎて、ちょっと難しかったです。)また、昨今騒がれている「ドルの弱体化」や、実態のイメージが沸きにくいヘッジファンドのビジネスについても、それぞれ1章かけて考察されています。信用バブルと代理人問題の関連や、アメリカにおける格差社会なども、とても興味深いテーマです。

金融も経済も、そして政治も、結局は人間の営みだものー、などと、様々な事を考えされられた今週の本ですが、先週ご紹介したイスラム金融(マネーと実体経済が密接につながっている「金融」です)
と対比するとまた、立体的な考察ができそうです。直に答えが欲しい!という方ではなく、グルグルと考えることが好きな方向けの一冊。

マネックス・ユニバーシティ 富田

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