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最終回 「モンゴル証券市場のこれから」
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今回のメールマガジンでのモンゴル特集は一応今月が最後になります。昨年6月から1年半の間お付き合いいただき、大変有難うございました。また、次の機会に、今度はもっと進歩したモンゴルのご紹介をしたいと思います。
今回は、モンゴルの証券市場の問題点とそれをどうやって活性化するのかについて、具体的に、資本市場参加者に対するメッセージというかたちでお伝えしたいと思います。
まず、問題点を理解いただくために、モンゴル証券市場の成り立ちについて触れた後、現状の問題点を探り、その問題点ゆえに空洞化しようとしている市場を活性化するための方策を、多方面に渡って、基本的な取り組みから技術的な解決方法まで幅広く検討してみました。
1. モンゴル証券市場の成り立ち
モンゴルの証券市場は、1992年にモンゴルが社会主義経済から資本主義経済に移行する過程で、国営企業の株式を国民に無償で供与するために作れらました。従って、国営企業はそのファンダメンタルにかかわりなく自動的に上場企業になったわけです。
一般個人投資家に配られた旧国営企業の株式は、徐々に少数の大手投資家の手に渡り、現在380社ある上場企業のほぼ90%の株式は長い年月をかけてそれら一部の大手投資家に保有されるようになり、彼らが実質的なオーナーとして企業を経営しています。
このようなかたちでの上場は他国にあまり例がなく、その後の証券市場の発達に影響を及ぼしています。
2. 現状の問題点
以上のように、証券市場とは名ばかりで、資本市場として全く機能していないばかりか、上場企業も資本市場に参加しているという認識がありません。これが全ての始まりで、結果として以下のような、とても資本市場とは言い難い現状になっています。
1) コーポレートガバナンス、コンプライアンスの欠如
2) ディスクロージャーの不徹底、連結会計制度に対する認識の欠如
要するに、資本市場としての証券市場を積極的に活用したいとの意図でスタートしなかったことに加え、一般大衆が持っている株式を如何に安く買い取るかということのみに注力してオーナーになった経営者ばかりですので、投資家の積極的な参加を期待すべくもないのが現状です。
3. 市場活性化の方策
今の状態が続くと市場が空洞化することが避けられません。事実、面倒くさい個人投資家の干渉を嫌って、上場廃止の手続きに入っている会社が数社あります。モンゴルの会社法では、ある一定の条件の下では、TOBをかけなくても発行体が少数株主の株式を買い戻すことが出来るようになっています。ただ、さすがに金融監督庁もなかなか簡単に許可は出さないようです。
そうは言っても、きちんと情報開示を行っている会社も数十社はあります。当社では、時価総額、浮動株の時価総額、株式の流動性の観点から上位15社を選定し、レポートを書いてウェブ上で公開しています。
数の上では大多数の会社がルールを無視した経営を行っていますが、上場企業でも大手については資本市場のルールを守ってきちんとした経営を行っているところがある訳ですので、そのような会社を投資家の皆様に紹介していきながら、少しでも市場の信頼を回復していきたいと思っています。
一番大事な点は、市場のルールを守らない会社へのペナルティが徹底していないことです。モンゴル証券市場の成り立ちのところで述べましたように、大部分の上場企業は実質的にオーナー企業になっている訳ですが、それらの経営者はモンゴルでの有力者が多くいます。そのため、ペナルティを課すことが難しいという、国としてのガバナンスの問題があります。
証券市場における最たるペナルティは上場廃止です。ただ、上場廃止になるとオーナーの所有している株式の市場価値が無くなるため、なかなか実行に移せないというのが現状のようです。しかし、市場のルールを無視している会社を温存しているようでは、優良企業や外人投資家の参加は期待できないでしょう。モンゴル証券市場の将来を考えるなら、これらの上場企業は直ちに上場廃止にすべきです。そうすることが、市場に対する広く前向きなメッセージになる筈です。
4. 専門的、技術的な観点からの市場活性化策
1) 外人投資家をどのようにして参加させるか
外人機関投資家が市場に参加する条件として、国際的なカストディアン・バンクが市場に参加しているかどうかがあげられます。外人投資家の購入した株式が如何に安全に保管され、また決済も問題なく行われるかという問題です。モンゴルでの上場株式の決済は国営の預託決済機構を通じて行われます。株券は全て電子化されていますので、券面の発行はありません。実際、受渡し等問題なく行われていますが、外人の機関投資家は、新興国へ投資する場合、技術的な部分でのカントリー・リスクは極力排除したいと考えます。従って、国際的なカストディアン・バンクが市場に参加して来ると、信頼性が増して、取引も活性化するものと期待いたします。
現在のところ、まだそのような具体的な動きは見られませんが、モンゴル株式をDR(預託証券)にして、ニューヨークやロンドンの市場で取引をさせたいと考えている預託銀行があるので、まず出来るところから始めてみたいと思っています。
2) いかにして取引できる株式の種類を増やすか(海外上場株式の招聘)
モンゴルは鉱物資源が豊富で、探査をする会社がたくさんあります。これらの会社の中には、カナダに会社を設立し、カナダの資本市場で資金調達をした上で、モンゴルの鉱山に投資をしている会社がたくさんあります。その理由としては、モンゴルの資本市場が機能しないことに加え、カナダにはそのようにまだ実際の生産が始まっていない探査の会社に投資をする、鉱業に詳しい投資家が数多くいることがあげられます。
何度もお伝えしているアイバンホー社もそんな会社の一つです。
例えばアイバンホー社のような有力企業に、モンゴルでの同時上場をしてもらうことは、モンゴル株式市場の活性化、外人投資家の招聘という観点から大変望ましいことだと思います。ただ、カナダ資本のアイバンホー社にモンゴル通貨で株式を発行させることは実際的ではありません。そこで、先ほど述べたDR(預託証券)を逆方向に利用するのです。
一般的にリバースDRと呼ばれていますが、トロント上場の会社の株式を、例えばトロント市場で増資をしてもらい、その株式を預託してモンゴル市場でDRを発行するのです。いくつかの新興国で取り入れているこの方法は、母国市場の活性化に非常に役に立つ手法の一つです。この場合、問題となるのは、リバースDRの引受けを行ってくれる預託銀行があるかどうかにかかっており、今のところまだ候補は出て来ていません。
3) モンゴルの優良企業に如何にして市場参加してもらうか
以上、述べてきたようなモンゴル証券市場の状況ですので、モンゴルに多くある優良企業グループは今のところほとんど未上場です。そもそもコーポレート・ガバナンスの問題があるのですが、彼らは連結財務諸表を開示するつもりが全くありません。従って、上場ということになっても、子会社の一つを上場させる程度にしか考えていません。それも、モンゴル市場への上場ではなく、海外の市場への上場を念頭に置いています。また、モンゴルの3大銀行もすべて未上場で、中の1行は海外での上場を計画しています。
確かに、流動性の問題から彼らのような大手には十分な必要資金の調達が出来ないという問題もあります。ただ、その場合でもDR(預託証券)を利用した、海外とモンゴルでの同時上場という方法での解決は出来る筈です。
本件は、モンゴルの経済界にとって非常に重要な案件ですので、是非ともモンゴルの
証券界、経済界ひいては政治主導も含めて、モンゴル人全員でモンゴルの資本市場の
将来のために何とか知恵を出してもらいたいものと強く希望しています。
そんな思いがあるので、10月にウランバートルで行われた、ロンドン証券取引所とバンクオブニューヨーク・メロンが共同で開催したセミナーのブローカー・パネルという討論会に、外資系証券会社4社の代表の一人として参加し、思いのたけをぶつけてきました。その時の写真をご紹介します。
また、今週モンゴルの証券業界が一致協力して、モンゴル証券市場の活性化策を首相と話をする機会を持ちました。私も微力ながら頑張りたいと考えています。
12月に入って真冬の気候となっている今日この頃ですが、市場では次々と新しいことが起こってくるものと予想されます。次回、モンゴルをご紹介する時には、多分全く違った横顔をご案内出来ることを期待しつつ、筆を置きます。
フロンティア証券 COO 岩崎勇二
eメールアドレス: staff@frontier.mn
ウェブサイト: http://www.frontier.mn
(日本語ページもございます)
岩崎勇二
山一證券で資本市場部長、山一スイス引受部長を歴任。山一破綻後は上場企業3社でCFOを務める。2008年6月に(株)アコーディア・ゴルフの執行役員を退任後、モンゴルビジネスに関わる。金融界には珍しい一級建築士。