HOME > マネーを学ぶ6つの方法 > メールマガジンで学ぶ > 第 23 回 モンゴルの鉱山開発の成功を握るインフラストラクチャー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
< 2 > 知られざる資源大国モンゴル 第 23 回
「モンゴルの鉱山開発の成功を握るインフラストラクチャー」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
モンゴルの鉱山の中で一番トレンディな話題となっているオユトルゴイ(OT)銅山については今までに何度もお伝えしてまいりましたが、今週火曜日(2009年10月6日)にやっと投資協定が調印されました。調印式は6日午後3時からモンゴルの国会議事堂の大ホールで行われ、モンゴル側から財務大臣、鉱業大臣、環境大臣の3人が調印、首相と大統領、国会議長も式に参列いたしました。投資家側からはアイバンホー社の副会長およびアイバンホー・モンゴルの代表、またリオティント社の銅・ダイヤモンド部門のCEOの3人が調印いたしました。
今回調印が6日間延期されたためアイバンホー社の創業者で会長を務めるフリードランド氏は式に参加できませんでしたが、同社のウェブ上で今回の調印について、モンゴル側が仏教のカレンダーで縁起の良い日を選んだことに賛同するとともに、この契約がモンゴル国民の新たな門出となることを祝福しております。また、これがアイバンホー社にとってもアジア地区における成功の鍵となると期待している旨述べております。
アイバンホー社の株価は、2009年10月6日ニューヨーク市場で前日比70セント高の13.7ドルで取引が開始されましたがその後弱含み、引けは前日比26セント安の12.77ドルで引けました。
調印までの過程がかなり長かったため、調印の事実はすでに株価に織り込み済みで、材料出尽くし感から利益確定の売りが先行したためと思われます。ただ、これからオユトルゴイの開発が進むにつれ、モンゴルにとっても、またアイバンホー社、リオティント社にとっても現在の試算以上の波及効果が出てくることは必至で、個人的にはまだまだ株価が伸びていくのではないかと思っています。
さて、オユトルゴイが無事調印されたことを受け、次はタバントルゴイ(TT)という石炭鉱山の開発案件の入札が具体化する予定です。ただ、この件に関しては前回説明しておりますので、今回はその後に控えているウランの開発事業について簡単に述べさせていただきます。
現在、世界のウランの埋蔵量は310万トンと言われております。モンゴルの埋蔵量は6万トンとされておりますが、モンゴルにはウランの鉱脈が豊富にあり、7月にモンゴルのバヤル首相が訪日した際、推定埋蔵量が160万トンという発言がありました。これは、現在埋蔵量が世界一のオーストラリアの75万トンの実に倍以上の量になります。
モンゴル政府はロシア、日本、フランスおよびインドと共同でウランに関して探査と採掘を進めていく覚書を結んでおり、将来的にはウランを原料で輸出するのではなく、モンゴル国内においてウランをイエローケーキという段階に濃縮加工して輸出する計画を持っております。モンゴル政府としてはこのウランの事業を国策の一つとして、今後の発展に何とか役立てたいとの思いがあるようです。
特に、日本は核、原子力燃料に関して非常に需要の高い国であり、最近30年間に30以上の原子力発電所を建設しました。また原子力技術において日本は世界でも有数の先進国であり、日本の技術は環境に優しい非常に安全な技術のため、日本はモンゴルとしても多分積極的に連携していきたい国の一つであることは間違いありません。
実は、2009年7月にモンゴル首相が日本を訪問している間に、モンゴルの国会で原子力法なるものが可決され、全てのウランの鉱床はモンゴル政府が無償で51%を取得するものとなりました。現在モンゴルではフランスのアリバ社、カナダのカメコ社のような大手から、カナダの中堅企業もウランの探査を手がけており、今回の原子力法の内容には戸惑っているというのが本音のようです。
ロシア、中国の両大国にはさまれたモンゴルは、政治的に何とか中立を保ちたい反面、各国の援助をいかに引き出すかという難しい命題に常に直面しています。今回の原子力法もロシアと中国からの過度の干渉を和らげる一方、現在進出している外国企業の撤退にまでは及ばないというぎりぎりの選択の中で行った決断ではないかと推察しております。今後、モンゴル政府がこの法律の改正をすることも否定出来ないのではと期待しております。
さて、今後モンゴルが鉱山業の開発を推進するに際し、ネックになっている課題がインフラストラクチャーです。鉄道、道路、電力、水等のインフラの整備は、金額が大きい割りにリターンがあまり望めない難しい事業であるだけに、各国とも政府主導で行うか、または国際機関からの低利の融資に期待するところが大きいプロジェクトです。モンゴルでは、今後の課題として、政府と民間が共同で事業を推進するPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)という手法の導入も検討されております。
また、今後のモンゴルのもう一つの重要な課題は、鉱山の採掘をして鉱物を輸出するだけではなく、ウランの例でも述べたようにいかに付加価値のある製品を生産する体制を構築することです。こうすることによって、モンゴルに製造業を根付かせることが出来、モンゴル人のメンタリティーを前向きに変えることが出来るかもしれません。
というのも今のモンゴル人には一攫千金を狙う人が多く、物事を真面目にこつこつやる人が少ないことがモンゴル人の弱点だからです。一般的に、サプライチェーン、バリューチェンと言われているように、例えばオユトルゴイの契約一つとっても、それが裾野まで広がっていくことを考えると、想像以上にモンゴルに前向きな効果を与えることになるものと考えています。
2009年10月に入って急に寒くなり、ほぼ日本の冬の気候になってきたモンゴルの今日この頃ですが、マーケットの方はホットになり始め、これからは目が離せない毎日が続くものと予想されます。
フロンティア証券 COO 岩崎勇二
eメールアドレス: staff@frontier.mn
ウェブサイト: http://www.frontier.mn
(日本語ページもございます)
岩崎勇二
山一證券で資本市場部長、山一スイス引受部長を歴任。山一破綻後は上場企業3社でCFOを務める。2008年6月に(株)アコーディア・ゴルフの執行役員を退任後、モンゴルビジネスに関わる。金融界には珍しい一級建築士。