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< 5 > 「しろやぎ通信 from NY」
第6回 パッチワーク
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アメリカの金融当局の動きが慌しさを増しています。
7月13日(日)、アメリカの財務省は、政府支援法人(Government Sponsored Enterprises)である住宅金融会社2社(Fannie Mae<ファニーメイ>、Freddie Mac<フレディーマック>)について、これらが「私企業」である形態を維持しつつ、1)GSEに対する政府の信用供与枠の増額、2)必要な場合には株の購入、さらに3)GSEの自己資本規制比率等についての規制を決める場合に、現在は監督する立場にはないアメリカの中央銀行FRBが関与すること、を求めていくことを発表しました。
また、FRBもこれに呼応して、ニューヨーク連銀が上記2社に直接貸出ができるようにすることを決定しました。
Fannie Mae、Freddie Macは、約12兆ドルのアメリカ住宅金融の約半分を供給している、アメリカの住宅金融の要です。
7月14日(月)の株式市場では、Fannie Maeは前日比-5%、Freddie Macは-8%下落しました。一方、両社の債務の信用度を測るCDS(Credit Default Swap)のスプレッドは、前日のほぼ2/3の水準である40ベーシスポイント(1ベーシスポイントは100分の1%)まで下がりました。すなわち、財務省提案により、市場でどう判断されたかというと、
債務については信用力が向上したが、これは既存の株主にとってプラスになる訳ではない、と判断された訳です。政府が資本注入を行う場合、最終的には税を支払う国民の負担になりますから、既存の株主に応分の負担をしてもらわなければ説明が付かないということになるだろうと解釈されたとも読めます。
さらに7月15日(火)、Fannie Mae、Freddie Mac株が大幅続落する中、アメリカの証券取引委員会(SEC)は、上記住宅金融会社2社(Fannie Mae、Freddie Mac)と、FRBと直接取引ができる銀行及び証券会社であるプライマリー・ディーラー17社の株について、空売りをする場合には、予め株を借りるか、その手配をしておかなければならないという規制を導入することを公表し、具体的な声明文は同日夜発表され、7月21日(月)から実施されることとなりました。まずは7月29日までの期間ですが、延長可能となっています。
SECはこの規制を導入する趣旨として、Bear Stearnsに関する資金繰りについての噂が結局同社に対するFRBによる緊急対応に繋がったことを、噂がもたらす典型例としてあげ、根拠のない噂を流す者に対するインセンティブを与えないようにし、ひいてはそのような噂で市場が操作されるのを防ぐ、と説明しています。
翌日の市場では、規制の対象になった株のショートカバーなどから株価は急騰しました。Fannie Maeは31%、Freddie Macは30%の上昇でした。
さて、今後ですが、FRBバーナンキ議長が指摘しているとおり、今回のアメリカの不況の根底には、住宅問題があります。前回のしろやぎ通信でお伝えしたとおり、S&P/Case-Shiller(主要20都市)という代表的な住宅価格指数でみると、2008年4月現在で、戸建住宅価格はピーク(2006年7月)に比べて約18%下落した水準です。販売対比でみた住宅在庫は通常の3倍近い状況になっています。住宅在庫が平常の状態(4~5か月分)であったのは2005年12月が最後で、足許はピーク11か月分をつけている状況ですから、単純に今が最悪の在庫状況と仮定しても、また在庫状況の改善には悪化と同じ時間がかかるとしても、「平常」になるまであと2年半かかる計算になります。いずれにしても、さらなる価格下落は避けられない見通しです。
一方、アメリカの典型的な住宅金融は、日本と同様、自己資金(頭金)20%と残り80%を借入で賄うという形です。したがって、住宅価格の下落が20%を超えると、借入金の部分に損失が食い込む形になります。実際には、抵当権を実行した場合のコストが2~3割かかりますので、貸付者の潜在的な損失は、それより前に始まっていると言えますが、いずれにしてもこの辺りを境にして損失が急速に拡大する形になります。
Fannie Mae、Freddie Macの今後の損失額は住宅価格と雇用情勢次第ですが、両社については、すでに「基本的に債務超過である」と考えている投資家(JimRogersなど)もいます。
やや乱暴な議論ですが、金融機関は万一実質債務超過(insolvency)であったとしても、資金繰り(liquidity)さえつけば存続し続けるものです。ただし、当然ですが決算発表の段階で償却があれば資本は減りますし、自己資本比率規制もありますので、民間企業として運営されている限り、損失の拡大が継続し、それに応じた資本増強が行えないならば、どこかで業務の限界が来ます。
議会証言を見ている限り、資本注入ないし「国有化」には、特に保守系の共和党員からの反対が強く(ここでは議会とホワイトハウスが「ねじれ」ています)、ポールソン財務長官も「目先、投融資が必要になるとは考えていないが、米国政府の支援の姿勢を市場に示したい」という説明振りです。11月の選挙を前にして、特に不人気な大統領を抱えた共和党議員は、こうした選挙民からの不興を買うであろう政策を支持するのは難しいのでしょうが、この点、腰を据えた対応ができなければ、マイナスのスパイラルは止まらないのではないかと思っています。